この記事では禁煙本の古典とも称すべきアレン・カーの著書、「読むだけで絶対やめられる」と謳う『禁煙セラピー』をご紹介します。
ただし、読んだことのない喫煙者で禁煙しようと思っている方、『禁煙セラピー』をこれから読もうと思っている方はネタバレにご注意ください。
注意 『禁煙セラピー』は「読むだけで禁煙できる」を謳った禁煙本です。
実際にこれで成功している人もかなり多いそうですが、『禁煙セラピー』は二度目に読んでも効果がないとも言われています。
この記事はある程度本の内容のネタバレになりますので、これから『禁煙セラピー』を禁煙に活用しようという人は、この記事を読まずに同書を買い求めた方がいいでしょう。
キング・オブ・禁煙本|アレン・カーの『禁煙セラピー』内容【ネタバレ注意】
著者のアレン・カーについては次の記事で書いています。
『禁煙セラピー』の原題直訳は『喫煙をやめる簡単な方法』
『禁煙セラピー』は日本ではそのまま『禁煙セラピー』という名で知られていますが、実は原題はちょっと違って『The Easy Way to Stop Smoking』というそうです。
直訳するなら『喫煙をやめる簡単な方法』といったところになります。
その「Easy Way」(簡単な方法)という言葉から分かるように、『禁煙セラピー』は本来、成功率の高さだけでなく「やさしい禁煙」「無理をせずに成功できる禁煙」ということに重点が置かれているものです。
例えばこの『禁煙セラピー』は読んでいる間は喫煙を続けても良く、著者アレン・カーの「さあ、最後の一本を吸ってください」という指示によって禁煙が開始される仕掛けになっています。
表紙の裏でも
- 「精神力はいらない」
- 「禁断症状がない」
- 「太らない」
- 「ヘビースモーカーほど簡単」
- 「代用品不要」
- 「誰でもすぐにやめられる」
といった特徴を謳っており、ちょっと信じがたい気がしますが、実際に多くの人がこれを「読むだけ」でタバコから卒業しています。
アレン・カーが『禁煙セラピー』を書いた理由
「『禁煙セラピー』の著者アレン・カーとは?死因が肺がんの理由」でも書きましたが、アレン・カーが『禁煙セラピー』を書いた経緯はこのようなものでした。
ある重度のニコチン中毒の患者さんがクリニックを訪れた時、大変その人は混乱していました。
そこでアレン・カーが落ち着かせようとなだめましたが上手くいかず、結局2人して泣いてしまったとか。
その経験から、当人が落ち着いている時にじっくり読んで禁煙に関する考えを理解できるように、本を書こうと決心、こうして生まれたのが『禁煙セラピー』です。
しかし、その男性は2度セラピーを受けたと書かれていますが、どうやら結局タバコを止めることができなかったようです。
アレン・カーは当時の自分の禁煙クリニックでの禁煙失敗率を16~20%としていますから、そのタバコを止められなかった16~20%の中の1人が彼だったということになります。
海軍の元軍曹の話
この男性の話は『禁煙セラピー』の中でもっとも痛ましいものです。
61歳になるこの男性は元は海軍の軍曹だったといいます。
ある時、アレン・カーに電話をしてくるとこのように切り出しました。
「ミスター・カー、私は死んでしまう前にタバコをやめたいのです」
男性の声は枯れてガラガラでした。
男性はタバコが原因で咽喉ガンにかかっていたといいますから、おそらくそのためです。
彼はタバコを1日に5本しか吸いませんが、それが体力的に限界だからです。
男性はこんな話をしました。
よく眠ることもできずに、睡眠中も1時間ごとに目が覚めてタバコのことを考えてしまい、寝ていてもタバコの夢を見てしまいます。
朝は5時に起きますが、1日に5本しか吸えないために10時まで1本目を吸うのを我慢して、紅茶をひたすら飲みます。
妻は8時に起きますが、夫の機嫌があまりに悪いので一緒にいたがらず、庭で時間をつぶすことになります。
9時になるとタバコを紙に巻き始めますが、完璧に巻けるまでやります。
その必要はないのですが、その方が時間をつぶせるからです。
そして10時まで待ちますが、既に禁断症状で手の震えが止まらないようになっています。
10時になってもすぐには吸いません。
吸ってしまえば、また3時間待たなければならないからです。
やっと火をつけても一服するとすぐに消して、それを繰り返して1時間もたせます。
残り5ミリまでなったらようやく捨て、次の1本を吸う機会を待ちます。
その男性はタバコをぎりぎりの長さまで吸うために、口の周りが火傷だらけだったといいます。
『禁煙セラピー』の主張や特徴
これから簡単に『禁煙セラピー』の禁煙メソッドの特徴をまとめようと思います。
まず無理をせずに「喫煙しながら読める」という点。
アレン・カーは「現在タバコをやめている人は、本書を読み終わるまでやめないでください」とまで書いています。
厳密に言えば終盤に「さあ、最後の1本を吸おう」というタイトルの章があるので、それを読みながら一服するか、読んだ後に最後の1本を吸うということになると思います。
またアレン・カーは強く「精神力に頼って禁煙をするな」と戒めています。
それでは禁煙は一種の「我慢大会」になってしまうからです。
そのために禁煙できたということを心から喜ぶこと。
『禁煙セラピー』はタバコのことを忘れるのではなく、思い出した時に何を思うかを重視しています。
元喫煙者は「自分は自由になった!」と思うべきだということです。
禁断症状について警戒が必要なのは、最初の3週間としていますが、その後の「ちょっと一本だけ」という発想についても強く戒めています。
そして興味深い特徴として、本数やニコチン・タール数を減らす「減煙」や「代用品の使用」を否定していることが挙げられます。
そのような方法での禁煙をアレン・カーは「トリック」を使った禁煙と呼んでおり、それで成功することもあることを否定はしていませんが、本質的には禁煙の成功に関係のないことと考えているようです。
彼自身が禁煙に成功したのは催眠療法が切っ掛けだったといいますが、それも催眠療法が優れているからではなく、偶然の結果だったと考えているのと同様です(しかしアレン・カーのセラピーでも催眠療法を使うことがあるそうです)。
アレン・カーの『禁煙セラピー』を読んだ感想
私は既に禁煙に成功してから読みました。
だから余計に『禁煙セラピー』による多くの禁煙成功体験を聞くにつけ、「この本がどの程度効果があるのか自分で試してみたかったな」と思います。
読んでみるとそこに書いてあることの多くは、禁煙やタバコについてよく知られている事柄が多く、アレン・カーの『禁煙セラピー』になぜそれほど禁煙を成功に導く強い効果があるのか不可解に思えたからです。
ただ無理を承知で何とか理解を試みるならば、『禁煙セラピー』の高い禁煙効果は次の2点に由来するのかな、と思います。
- あえて最初は「現在タバコをやめている人は、本書を読み終わるまでやめないでください」として、禁煙に「お預け」を食わせることで禁煙へのモチベーションを蓄積するということ。
- 「さあ、最後の一本を吸ってください」という合図で最後の1本を吸うことで実現できる、一種の「同時進行感」、大げさに言えば一種の「ライブ感」が強い効力を生む。
あるいはそうでなければ、アレン・カーの禁煙への執念というものが『禁煙セラピー』の文体を形作っていて、禁煙へと向かわせる軽い催眠効果を持っているのではないか、とでも推測するしかないかもしれません。
そう考えるならむしろ、催眠術にも「効く人」と「効かない人」がいるみたいに、『禁煙セラピー』の効果がない人についても、たまにいる「催眠術の効かない人」のように考えられ、理解しやすい気がします。
もちろん、こんな推論に無理のあることは百も承知の上ですが。