この「禁煙物語」は禁煙する人のため、禁煙したい人のために役立つ情報を発信しようという禁煙ブログです。
たぶん張り切り過ぎたんでしょうね、ブログを開始してすぐに私は、「よし、禁煙関係の本を片っ端から読んでやろう」と、遅読にも関わらず無謀な野望を抱きました。
そしてAmazonで頼んだ大量の書籍が自宅に到着する中、当然後手後手になり積ん読化する多くの禁煙本たち。
にも関わらずしっかり優先順位をつけずに、遊び心から「中身を見ずにランダムに開けてみて、最初に引き当てたヤツを読んでみよう」とバカな考えを起こし、そのくじ引き方式で引き当てたのがこちら、伊佐山芳郎による著書『現代たばこ戦争』です。
とりあえずザっと中身を読んでみたので、ご紹介しようと思います。
禁煙本というより禁煙事情・タバコ事情本
私は知らなかったのですが、伊佐山芳郎さんという方は喫煙に反対する運動では先駆者であり、有名な方みたいですね。
1980年には国鉄や国などに対して「嫌煙権訴訟」を起こしたり、1998年には国と日本たばこ産業およびその歴代社長を製造物責任を問うた「たばこ病訴訟」を起こすなど、なかなか暴れん坊です。
まず『現代たばこ戦争』の内容については、禁煙本というより禁煙事情本、より具体的には、タバコ会社や世界的な禁煙情勢などについて書いた本でした。
しかも1999年に出版された20年も前の本だから情報がちょっと古い感じはします。
20年という時の流れを感じる
『現代たばこ戦争』の中では受動喫煙防止運動について、「嫌煙」とか「嫌煙権」という言葉を使っていることが時代を感じさせます。
文字通り受動喫煙を嫌うこと、受動喫煙を嫌う権利のことですね。
そうか、昔は「嫌煙」なんて言葉を使っていたのか、と時間の流れを感じます。
そもそもなぜ「嫌煙」という言葉はほとんど使われなくなったんでしょうか?
たぶん、タバコの害への問題意識が深化した結果、「好き嫌い」ではなく「良い悪い」の問題、「嫌い」という主観的・感情的問題ではなく、「悪い」という倫理的判断の問題だと考えられるようになったせいなのかもしれません。
とりあえずこうした言葉一つ取り上げてみても、この20年でより喫煙者の肩身が狭くなっていったということが分かります。
逆にタバコを吸う「嫌煙運動反対派」は「それは嫌煙ファシズムだ」なんて言葉を使っていたみたいで、「ああ、この頃から反対派の主張を『ファシズム』扱いするという戦術は廃れていないんだな」と思いました。
「嫌煙ファシズム」は今でも「禁煙ファシズム」なんて言葉で生き残ってますよね。
タバコ会社の未成年へのタバコ売り込み戦略
『現代たばこ戦争』にはちょっと怖い・ショッキングな話も書いてあります。
以前聞いたことのあるような気もしますが、はっきり書籍などに書かれているのは初めて読みました。それは何と、海外のいくつかのタバコ会社が、未成年を標的にして市場調査をして商品開発や広告に利用していたというのです。
まずアメリカのタバコ会社であるRJレイノルズ。
研究開発部長のクロード・ティーグは1973年の文書の中で、13~17歳の「吸いはじめスモーカー」用のタバコをこのように考えていたといいます。
「こういったタバコはマイルドな味わいで、顧客の体がまだよく慣れていないので、ニコチン量も普通よりやや低めでなければならない」
また高校や中学の近くのコンビニで、景品付きのタバコや宣伝物によって集中攻撃をかけるという戦略が取られていたことが地区担当部長のJ・P・マクマホンのメモによって明らかにされました。
こうした子供を標的にした戦略に「非倫理的だ」と抗議した部下のテレンス・サリバンは、「会社の方針なんだ」と返されました。
1976年当時のインペリアル・タバコ・オブ・カナダ社の「シックスティーン計画」はもっと有名かもしれません。
「シックスティーン計画」は、喫煙はどのようにして始まるか、ハイスクールの学生は喫煙者になることについてどのように感じているか、将来における自分の喫煙を予想しているか、などを調査することが目的でした。
それによれば、若年層の間ではタバコの「味」や「ニコチンの高揚性」は重要ではなく、その他の「社会的要求条件」の方が重要だといいます。
平たく言えば、「タバコの味」ではなく「イメージ」だということです。
1977年10月18日付「シックスティーン計画」報告書では、青少年にとってタバコの持つ「禁断の果実的側面」が重要であり、「青春期にある人間の、独立への衝動を表現するシンボルとしてタバコは最適である」としています。
最後に:『現代たばこ戦争』の禁煙本としての活用法
『現代たばこ戦争』は厳密にいえば禁煙本ではありません。
しかし企業利益のためなら人命や倫理観など二の次にしてしまえるタバコ業界の恐ろしさを書いているという点で、禁煙希望者に「タバコ会社の食い物にされてたまるか!」と発奮させる効果はあるかもしれません。
難を言えば、もうちょっと情報が新しい方がいいな、と思いますが、そのような禁煙本としての活用法もあると思います。