女子栄養大学出版部の『たばこがやめられる本』(斎藤麗子)を読む

禁煙本

今回ご紹介する禁煙本は女子栄養大学出版部から出ている『たばこがやめられる本』(斎藤麗子)です。

副題は「やめたい やめさせたいときの禁煙サポート」で、他の禁煙本との違いは、喫煙者の当人だけでなく周囲の「やめさせたい人」が読むことも意識して作られているということです。

著者の斎藤麗子さんは2016年から日本禁煙推進医師歯科医師連盟会長をしている方です。

それでは内容、注意を引いたところなどを紹介したいと思います。

女子栄養大学出版部から出版

出版しているのは「女子栄養大学出版部」で、大学の出版部というのが珍しいですね。

禁煙本としてだけでなく、一般に流通する出版物が大学の出版部から出ているということ自体、珍しいことなのではないでしょうか。

女性・母親の喫煙

女子大から女性の医師が出した本というだけあって、女性の喫煙について他の禁煙本よりページを割いているという印象を受けます。

初版が2000年(平成12年)で当時、若い女性の喫煙がやや増えていたらしく(現在は減少)、妊婦や母親の喫煙などに警鐘を鳴らしています。

妊娠中に禁煙をしていた女性は、出産後は「これでもう吸える」と考えがちですが、母乳で育てる場合、喫煙をすると母乳中にニコチンが含まれるようになり、赤ん坊が慢性ニコチン中毒になる可能性があります

また当然乳幼児が副流煙の害を受けない点でも、母親の禁煙は重要としています。

前半部はたばこの害に関する知的啓蒙

前半部の「たばこの害について知りましょう」では、そのようなデータ重視で、実践的な禁煙知識というよりタバコの害に対する知的な啓蒙の要素が強いです。

がんの発病率などを取り上げているのはもちろんですが、タバコと歯周病の関係も取り上げています。

大阪大学予防歯科学教室の研究によると、喫煙者の歯周病のリスクは非喫煙者に比べて2~9倍もあるといいます。このリスクは禁煙して元喫煙者になることで2分の1に減少させることができます。

タバコによる経済的損失

またユニークなのはタバコによる経済的損失を取り上げているところです。

局所的・短期的に見れば、たばこはたばこ会社を儲けさせ、国には税収を与える効果があります。しかし総体的・長期的に見た場合には、マイナスになります。

たとえば日本の場合、たばこ会社の納税、賃金や材料費の支払いなど、国家経済への寄与による経済的メリットは2兆8000億円になります。

一方でタバコによる経済的損失は医療費、死亡することによって失われる国民所得、消防・清掃を含め5兆6000億にもなります。

これを経済的メリットと差し引きすると、タバコは日本経済に対して2兆8000億円の経済損失を与えていることになります。

禁煙の実践

『たばこがやめられる本』は比較的データ重視のため、禁煙についての実践的なアドバイスはそれほど多くはありません。

しかし実践的な部分では、特に食生活の改善については参考になる部分も多く、下記の記事は『たばこがやめられる本』を参考に書きました。

禁煙サポート

『たばこがやめられる本』でユニークなのは、本の末尾にある「禁煙をサポートします」という章です。

夫へ・妻へ・成人した息子へ・成人した娘へ・祖父へ・祖母へ・職場の隣人へ・教師へ・中高生へ・恋人へ・妊娠中の人へ・と題して、それぞれの関係性の人に向けて「タバコをやめた方がいい理由」を2~3ページにわたってまとめています。

例えば「妻へ」の場合は、喫煙は美容の大敵で声の質も変えてしまうとか、「祖父へ」では、禁煙をしたために、タバコ臭さから寄り付かなかった孫が膝の上に乗ってくれるようになったというエピソードを紹介しています。

重度の喫煙依存の人の場合は、苦言を呈すると嫌な顔をされるでしょうが、周囲にタバコをやめてほしい喫煙者がいる場合には、このページを読んでタバコをやめるためのアドバイスや説得の際の参考にできるかもしれません。

最後に

全体の印象としては、これをアレン・カーの『禁煙セラピー』のように実践的な禁煙本ととらえるのは無理があるかな、という印象を受けます。

そう考えると『たばこがやめられる本』というのは言い過ぎになるのかもしれませんが、禁煙の基礎知識としては、豊富なデータで喫煙の害を啓蒙していることは間違いありませんし、これで禁煙する気になる人も中にはいるでしょう。

あまり「禁煙サポート」(タバコをやめるのではなく、やめさせる)ということに対して期待しすぎなければ、読んでそこまで失望することもないかと思います。

禁煙の入門編としては上出来だと思います。個人的に気になったのは、本のサイズが大判で、他の文庫や単行本と一緒に本棚に入らなかったことくらいですかね。

以上、この記事があなたの参考になれば幸いです。

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