通常、タバコの依存性・中毒性はニコチンによって作られていると考えられています。
ところが、これは実は間違い、もしくは正確ではないかもしれない、という説もあります。
いったいどういうことでしょうか?
この記事では「本当にタバコの依存性はニコチンによるものなのか?」という疑惑について書いてみました。
タバコの依存性は本当にニコチンによるものなのか?
既に書いたように、通常、タバコの依存性はニコチンによって生み出されるというのが通説です。
記事:タバコの依存性をドーパミンとセロトニンの働きから説明する
しかし、これは多くの人が吸っている紙巻きタバコを、同じく多くのニコチンを含むあるものと比較した場合、違和感が出てくる仮説です。
その「あるもの」とは葉巻です。
葉巻のニコチン含有量は紙巻タバコの1000倍
紙巻タバコと同様、葉巻にも多くのニコチンが含まれています。
いや、はっきり言えば「多くのニコチン」なんてものじゃありません。
我々のよく知る紙巻タバコと比較にならないほど大量のニコチンが含まれています。
どれくらいのニコチンが含まれているかご存じでしょうか?
10倍? 20倍?
いいえ、葉巻に含まれるニコチンは紙巻きタバコの1000倍もの量だとされています。

げげっ!1000倍!?
凄まじいですね。
なぜ葉巻には激しい依存性がないのか?
ところが、ここですぐに違和感が出ます。
葉巻を吸っている人を思い浮かべて下さい(あまり周囲にはいないかもしれませんが)。
葉巻には紙巻きタバコの1000倍のニコチンが含まれています。
ということは単純に計算すれば、葉巻を吸っている人は紙巻タバコを吸う人の1000倍、ニコチン中毒であり、葉巻に依存しているはずです。
たしかにタバコは肺まで入れる、葉巻は口に含んで肺までは入れない、という嗜み方の違いはあります。
しかしそれにしても、葉巻を吸う人はニコチンを含む葉巻の煙のど真ん中にいて煙を吸い込まざるえないはずですから、100倍、あるいはどれほど少なく見積もっても10倍はニコチンを吸引しているはずです。
そしてそれならば、葉巻は紙巻きタバコに劣らず、それどころかずっと深刻な社会問題になっていそうなものです。
あるいは、葉巻の生産国のキューバなんて、麻薬を生産して密輸しているという噂が立てられる某国のように悪評高くなっていなければ辻褄が合いませんよね(笑)
ところが、まったくそんなことはありません。
そう、葉巻には我々がよく知る紙巻きタバコほどの激しい依存性はないらしいのです。
それでは、タバコの依存性がニコチンに由来するという通説が、にわかに怪しく感じてこないでしょうか?
もし従来通りニコチンがタバコの依存性の原因と考えるならば、一般的な紙巻タバコと、葉巻タバコの間に、なぜこれほど大きな依存性の違いが生まれるのか説明できなくなるためです。
犯人はタール?人工ニコチン?
さあ、分からなくなってきました。
通常タバコの依存性の原因とされているニコチンは、実はそれほど強い依存を引き起こさないものなのかもしれません。
となると、我々が感じている(あるいは感じたことのある)タバコの強力な依存性・中毒性の正体とは何なのでしょうか?
切り口を変えて、紙巻タバコにあって葉巻にないものを考えてみましょう。
一つは「タール」です。
タールは「【紙巻タバコの作り方】煙草はどのように製造されるのか?」で解説したように、草であるタバコとは本来は関係のない木の幹を砕いたものによって紙巻タバコに含まれるようになります。
このタールは純粋なタバコの葉を用いて作った葉巻には含まれていません。
それならば、これがタバコの依存性の原因でしょうか?
しかしこれも違うようなのです。
タールはそれ自体単なる毒物であるために、依存を引き起こすどころか、普通に摂取しようとすると体が拒絶反応を起こすだけです。
つまりタールはタバコの(発がん性の原因であっても)依存性の原因ではありません。
それではもう一度、タバコをどのように作っていたかを思い出してみましょう(【紙巻タバコの作り方】煙草はどのように製造されるのか?)。
そうすると紙巻タバコは製造工程において、天然の植物由来のニコチンではなく、人工のニコチンが使用され、含有されていることに思い至ります。
依存性の正体はこれでしょうか?
つまり本物の、天然のタバコ葉・植物由来のニコチンではなく、化学的・人工的に合成されたニコチンであることから、タバコは何かしら依存性を引き起こしているのではないか、ということです。
人工ニコチンが脳の受容体を破壊?
なぜ仮説的に人工ニコチンがタバコの依存性の原因となるかもしれないと考えられるか?
我々の吸う(あるいは吸っていた)紙巻タバコには、タバコ葉に由来する天然のニコチンではなく、人工的・化学的に合成された人工ニコチンが含まれています。
この人工ニコチンは、いわば合成薬物です。人工ニコチンに限らず、合成薬物にはどうしても精製の過程で不純物が混入されると考えられます。
そうすると、この人工ニコチンに含まれる不純物が、何かしら強い依存性を引き起こしていると考えられるかもしれません。
例えば、アメリカで問題となった「メタンフェタミン」という強い依存性を持つ合成薬物の場合、それを摂取するうちに耐性がついて効きづらくなり、そのためにより大量に摂取することになります。
それ以上に深刻なのが、メタンフェタミンがドーパミンの受容体を破壊してしまう危険があるということです。ドーパミンの受容体が破壊されると、いくらメタンフェタミンを摂取してもドーパミンが生成されなくなります。
脳それ自体が破壊されてしまうということです。
こうして常時ドーパミン不足の状態になり、ドーパミンを出すためにメタンフェタミンを摂取するが、それでもドーパミンが不足して不安や苛立ちに苦しむ、ということになります。
これと同様に、人工ニコチンに含まれる不純物が脳の受容体を破壊しているという可能性があります。
そのためにタバコをいくら吸ってもドーパミン不足が完全には解消されない、という中毒症状につながっているのかもしれません。
つまりコストを抑えるために精製する人工ニコチンに不可抗力的に不純物が含まれ、それがタバコの依存性の原因となる?・・・(あるいは邪推するならば、タバコに依存させた方が商売繁盛するタバコ会社が意図的に含ませている?・・・)。
しかし、これらも一つの説、推測に過ぎません。
結局、タバコの強い依存性の正体は、(通説はありますが、万人が納得する真犯人として)「間違いなくこれだ」というのが確定しているわけではないというのが正直なところです。
タバコの依存性は本当にニコチンによるものなのか?まとめ
通常の紙巻タバコと比較して圧倒的に多くのニコチンを含む葉巻と比較した場合、タバコの依存性の原因が(天然の)ニコチンであるという通説には疑問が沸きます。
タールが依存性の原因ではないことは確かなので、そうなると人工のニコチンを精製する過程で含まれる不純物や、あるいはそれ以外のものが、タバコの強い依存性を引き起こすのではないかと考えられます。
確証があるわけではないですが、少なくともニコチンだけを全面的に悪者にする依存性の説明には、眉に唾を付けて聞いても間違いではないかもしれません。
参考:『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』