禁煙にチャレンジして失敗したことのある人は、

いったいなぜタバコをやめるのはこんなに難しいんだろう?
と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。
その禁煙の苦しみや難しさの原因はタバコの依存性にあり、その依存性は大きく分けると身体的依存と心理的依存になります。
身体的依存は「ニコチン依存」とも呼ばれるもので、心理的依存は「習慣的依存」と言い換えることもできます。
この記事を読むことで、そのタバコの身体的依存と心理的依存とはどのようなものなのかが理解できるでしょう。
タバコの身体的依存とは?
タバコの依存性に深く関係していると言われているのが、皆さんの誰もがご存じ、タバコに含まれる「ニコチン」、そしてもう一つが脳内の「アセチルコリン受容体」です。
ニコチンは誰もが聞いたことのあるものだと思います(タバコの箱の側面に、タールとともに含有量が明記してありますよね)。
ではアセチルコリン受容体とは何でしょうか。
アセチルコリン受容体
まず「アセチルコリン受容体」は文字通り「アセチルコリン」という神経伝達物質を受け取るためのものです。
アセチルコリン受容体の「受容体」は「レセプター」とも呼ばれ、外界からの刺激を情報として利用できるように変換する機能があります。
アセチルコリン受容体にアセチルコリンが受容されると、自律神経を刺激して、心拍数が変化したり消化管運動や消化液の分泌が促進されたりします。
簡単にいえばそれによってドーパミンが出るわけです。
ドーパミンは運動を促すホルモンで意欲・学習・快感情と関わります。このドーパミンが出ると「やる気が出る」「意欲が沸く」、また思考が促進されるという状態になります。
この仕組みはもともと人間の脳に備わっているもので、これ自体は自然な構造です。
ニコチンがアセチルコリン受容体に作用
さて、タバコの依存性の最大の原因であるといわれているニコチンですが、このアセチルコリン受容体との関わりで登場します。
本来アセチルコリンを受容するためのアセチルコリン受容体ですが、タバコを吸うと、このアセチルコリンとニコチンの取り違えが起こります。
つまりアセチルコリン受容体がニコチンをアセチルコリンだと勘違いして、脳内でドーパミンが生成されます。

来たよーー

おっ、毎度!アセチルコリンの旦那!

おいおい、オレはアセチルコリンじゃなくてニコチンだぜw

マジっすか!?
ま、よく似てるんでいいっすわ!

アンタ話が分かるねw
これからヨロシクな!
こんな感じですかね(笑)
そしてさらに、アセチルコリンは脳内で自然に分解されますがニコチンは分解されません。
そのために脳はなおさら「アセチルコリンがいっぱい出てる!」と勘違いしてドーパミンを大量に生成することになります。
ドーパミン分泌からのセロトニン分泌
そしてドーパミンが出ると、今度はそのカウンターとしてセロトニンというドーパミン抑制物質が大量に放出されます。
このセロトニンはドーパミンとは逆に、精神を安定させ、気持ちよくリラックスさせる効果があります。
ということでタバコを吸うと、①ドーパミンが出てやる気が沸き、なおかつ、②セロトニンも出てリラックスすることができる、というわけです。
このドーパミンとセロトニン、ふたつの脳内物質の生成がタバコを吸うことによって得られる「快感」や「リラックス効果」の正体ということになります。
つまり「アセチルコリン→ドーパミン→セロトニン」という過程が「ニコチン→ドーパミン→セロトニン」という過程に置き換わるわけです。
脳がドーパミンの自然な生成をサボるようになる
さあ、ここからが肝心な点です。
タバコを吸ってドーパミンの生成→セロトニンの生成という風に進むわけですが、このドーパミンやセロトニンはニコチンによるアセチルコリン受容体への刺激に限らず生成されるわけで、別に大きな実害はないはずです。
だって自分で料理できる人がたまに外食したところで、それでどうということはありませんから。
ところが、この喫煙によるニコチン補給=喫煙の習慣の継続の場合、タバコによる外的刺激に慣れ、本来脳が持っている、自発的にドーパミンを生成する働きが鈍くなります。

別にオレが頑張んなくても
ニコチンの旦那がやってくれるっしょ!
先ほどの外食の例えで言えば、料理ができる人だったのに外食ばかりしている内に、以前は自分がどうやって料理していたか忘れてしまうみたいなものです。
要は脳がドーパミンの生成をサボるようになるわけです。
禁煙するとドーパミン不足・セロトニン不足になる
こうしてタバコを吸わないと脳がドーパミンを生成せず、なおかつドーパミンが生成されないことでドーパミン抑制物質のセロトニンも生成されにくくなります。

はあーダルッ。。
ドーパミン不足による症状はこのようなものです。
- やる気が出ない
- 体がだるい
- 気持ちが落ち着かず、イライラする
- 運動機能が低下し、(時には)手が震えたりする
さらにセロトニン不足によって、気持ちが落ち込み、鬱っぽい症状が出ます。
このような離脱症状から逃れるために、喫煙者は新たな1本に手を伸ばしてしまいます。
これがタバコの身体的依存(ニコチン依存)です。
このような身体的依存によって、喫煙者はタバコを常習的に吸うようになります。
タバコの心理的依存とは?
心理的依存
では心理的依存とは何でしょうか?
まず先に説明した喫煙の身体的依存のために、タバコを吸う時、喫煙者はニコチンの離脱症状を一時的に緩和することができます。
それによって、

タバコを吸ったら気分が良くなった!
喫煙にはメリットがある!
と喫煙者は錯覚してしまいます。
これは実際には離脱症状が緩和されたにすぎませんが、そのような「喫煙にはメリットがある」という喫煙者の思い込みが、タバコの心理的依存の一つです。
別名:習慣的依存
さらに、タバコを常習的に吸うことによって、喫煙者の生活上で「このタイミングで吸う」という習慣が徐々に形成されていきます。
例えば次のようなものです。
- 朝起きて一服
- 食事の後に一服
- 家を出たら一服
- 仕事の休憩中に一服
したがって禁煙すると、今まで習慣としてタバコを吸っていたこのようなタイミングで手持無沙汰になるため、喫煙者はストレスを感じることになります。
計算上、1日に20本タバコを吸う人は、仮に1本を5服ほどで消した場合であっても、1日100回もタバコを口に運ぶ動作をすることになります。
当然1週間では700回、1年間では36,500回も口に運ぶことになり、そのような常習化した所作を中止すれば、何やら落ち着かなくなるのは当然のことです。
このように習慣づけられたために条件反射的になっているタバコへの依存も含め、タバコの心理的依存と呼ぶのです。
したがって、心理的依存は別名・習慣的依存ともいいます。
習慣的依存が心理的依存と同一視されるのは、習慣とは人の心(心理)に根付いているもので、一種の心理状態だからです。
心理的依存と習慣的依存の区別
だから心理的依存と習慣的依存は同じものです。
しかし強いて言えば、「タバコにはメリットもある」とか「タバコは活力を与える」などの喫煙者のビリーブ(信念)を意識した言葉が「心理的依存」であり、「このタイミングで吸う」とか「この状況で吸う」などの習慣づいた癖を意識した言葉が「習慣的依存」になります。
一方で、この心理的依存=習慣的依存は、脳に影響を与える物質としてのニコチンに依存しているわけではないため、身体的依存(ニコチン依存)とは区別されます。
タバコの身体的依存と心理的依存まとめ
ここまで見て来た通り、タバコにはニコチンによる身体的依存と、喫煙習慣や思い込みによる心理的依存の2つがあるということになります。
したがって、禁煙する時にはこのタバコの身体的依存と心理的依存の両方にそれぞれ上手くアプローチできるかどうかが、禁煙成功の鍵になります。