この「禁煙物語」は禁煙したい・禁煙してる人のための禁煙応援サイトです。
だから少しずつ禁煙本の紹介をしていきたいと思います。
記念すべき第一冊目は苫米地英人博士の『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』をご紹介します。
『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』は、タバコをやめられる、(葉巻を推奨するなど)喫煙習慣を必ずしも否定しない、頭が良くなる、という三本柱を謳った禁煙本です。
喫煙習慣を必ずしも否定しないということで、これ、禁煙本書評の第一回目にご紹介するものにしてはちょっと変わり種かもしれません。
しかしとりあえず手元にあったこれを取り上げてみたいと思います。
著者の苫米地英人について
まず著者の苫米地英人さんについて説明します。
苗字が特に見慣れない感じですが、名前は「とまべち・ひでと」と読みます。苫米地英人の出身は東京で1959年生まれ、プロフィールで一番最初に来る肩書は認知科学者です。
しかし他にも、
- カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)
- 同Cylab兼任フェロー
- 株式会社ドクター苫米地ワークス代表
- 角川春樹事務所顧問
- コグニティブリサーチラボ株式会社CEO
- 中国南開大学客座教授
- 全日本気功師会副会長
- 米国公益法人The Better World Foundation日本代表
- 米国教育機関TPIインターナショナル日本代表
- 天台宗ハワイ別院国際部長
- 財団法人日本催眠術協会代表理事
こんな感じで物々しい肩書を幾つも持っています。
私自身すべてを知っているわけではありませんが、催眠術や仏教についても造詣が深く、そして「コーチング」といって当人のエフィカシー(自己効力感、簡単に言えば「私にもできる!」という気持ち)を高めるプログラムの伝道者としても有名な人です。
またオウム真理教信者の脱洗脳プログラムに関わったことでもよく知られており、『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』の「脱洗脳」もそれに由来しています。
下のYouTube動画に映っているのが苫米地英人です。
喫煙の仕組みの基本を解説
そこで『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』の話に戻りますが、序盤部ではアセチルコリン受容体やドーパミン・セロトニン、といった言葉で、認知科学者らしく脳の仕組みから喫煙の依存性やタバコについて基本的なことを解説していきます。
だから例えば、このブログの中で、
の三つの記事は『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』に書かれてた内容を下敷きに書きました。
『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』は三章構成ですが、特に序盤部、第一章については、そのように喫煙の仕組みについて基本的なことが書かれています。
タールは天然のタバコの葉には含まれず、タバコ葉と無関係なもの、つまり粉々に砕かれた木の幹であるチップに由来する、といった話は初めて聞く人には新鮮だと思います。
紙巻きタバコの代わりに「葉巻」を推奨
しかし「禁煙本」としては微妙なところもあります。
なぜなら禁煙本にも関わらず葉巻を吸うことを勧めてくるからです。
そうした部分があるので、この禁煙応援ブログで堂々と「タバコをやめたい人は読んでみてください!」と勧めにくいところです。
もちろん、苫米地英人がタバコ(紙巻きタバコ)の代わりに葉巻を勧めることにはちゃんとした理由(根拠)があります。
彼が言うには、葉巻愛好家である自分にしても、周囲の葉巻愛好家を見渡しても、明らかに葉巻には市販の紙巻タバコほどの常習性・依存性・中毒性がないから、というのがその根拠です。(こちらはその議論についてまとめた記事です→タバコの依存性は本当にニコチンによるものなのか?)
たしかに「タバコタバコ!」と喫煙所に駆け込む喫煙者はありがちですが、「葉巻葉巻!」とあわてて葉巻に火をつける葉巻愛好家はあまり想像しにくいですよね。
苫米地英人式禁煙術
第二章「Dr.苫米地式・禁煙術」から具体的な禁煙方法の話になります。
ただし中には本を読むだけで実践するにしてはやや専門的すぎるという印象も受けるものもありますが、しかしともかく「禁煙法その1」から「その6」まで全部で6つありますので、一つずつ紹介していきましょう。
(1)フレームの中断
「フレーム」とは、喫煙に限らず、行動の枠組みのことを意味しています。
喫煙のフレームの場合なら「朝起きる→一服する」「仕事が一段落する→一服する」といった枠組みになるでしょう。そしてこの一連のフレームはほとんど無意識に行われます。
例えば食後の一服のフレームを細かく分けるなら「店に入る→食事する→タバコを出す→火をつける→喫煙」ということになります。
「フレームの中断」とは、この一連の連鎖的行動をどこかで止めることを意味します。
素朴な例でいえば「タバコを持ち歩かない」といったものもそうです。食事をした後、タバコを取り出そうとする、だが持っていないことに気づく。
すると次の「火をつける」は行うことができないのでフレームは中断され、無意識に次のタバコを吸ってしまう、ということはなくなります。
もちろんこれだけでタバコをやめることができるのは喫煙歴の短い人だけでしょうが、人によってはわずかな工夫で止めることができるということです。
(2)フレームの組み換え
二つ目は「フレームの組み換え」です。
タバコを吸う人にはその喫煙行為が何かしらのスイッチになっていることがあります。例えば仕事の前に一服することで「さあ、これから仕事だ」と切り替えている人もいます。
そうした人の場合、その喫煙行為へのそのような意味づけがなくならない限り、喫煙習慣をやめることができないということになります。
このような儀式的行為を「トリガー」、それによって引き出される特定の意識状態を「アンカー」と呼ぶことができますが、このトリガーが「タバコを吸う」という行為になっている場合に、それを変化させるのが「フレームの組み換え」です。
例えばタバコを吸う代わりにコーヒーを飲む、音楽を聴く、といったものに変えることでフレームを組み替えることができます。
(3)ドーパミン不足をタバコ以外で解消する
禁煙によってドーパミン不足になる場合、これはタバコに対して身体的依存があるということになります。しかしこの身体的依存であるドーパミン不足はタバコ以外のもので解消することもできます。
例えばチョコレート(糖分)、コーヒー(カフェイン)、他にもアルコールや運動でも脳内でドーパミンを放出することはできます。
このように特に禁煙開始初期に、別のものでドーパミン不足を解消するのが「禁煙法その3」の「身体的依存をずらす ドーパミン不足をタバコ以外で解消する」です。
禁煙中に飴やガム(糖分)を取る行為はこうした観点からも有効なのかもしれません。ただし当然過剰な摂取は肥満・生活習慣病に繋がりやすいので注意しましょう。
(4)止観(瞑想)
禁煙法の四つ目は「止観」、仏教の座禅についてよく使われる言葉で、不安や焦燥などの自分の常道を客観的に見ることをいいます。
必ずしも座禅を組む必要はなく、情動を客観視できればそれでいいです。
仕事などでストレスがピークに達した時にはついそれをタバコで解消しようとしてしまいますが、その代わりに深呼吸してリラックスします。
自分が不安や焦りを感じていることを認識しつつも、それが少しも問題を解決してくれないことを自覚し、不安や焦りなどのネガティブな感情をフェードアウトさせていきます。
止観は特に喫煙の精神的依存に対して有効です。
(5)マイナスの自己催眠
マイナスの自己催眠とは、文字通りタバコに関するネガティブなイメージを自分で自分に刷り込むことです。
肺が真っ黒になる→病気になる→病院に入院する→治療を受ける→必死の治療も空しく死んでしまう。こうした過程を臨場感をもってイメージします。
そのイメージを毎日繰り返すことでタバコを見ただけで嫌悪感・不快感を抱くようになるといいます。これは苫米地英人がインド密教の瞑想をアレンジしたものです。
(6)プラスの自己催眠
プラスの自己催眠はそれとは逆にタバコをやめることで生まれるポジティブな未来、例えば、健康になってスポーツを楽しむ、長生きする、浮いたお金で車を買う、などをイメージして反復します。
マイナスであれプラスであれ、自己催眠は実際にはなかなか難しいかな、と思いますが、以上の6つが苫米地流の禁煙術になります。
苫米地英人の『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』まとめ
これでメインの苫米地式禁煙術についてはまとめられたので、この記事はこれで終わりにしようと思います。
『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』の第三章では「タバコ曼荼羅」などの独自の瞑想法についても解説がありますが、瞑想をして「気持ちのいい体感を尾てい骨の裏側に移動させる」など、明らかに瞑想の上級者でなければできなさそうなことが書かれています。
そうしたことを加味すると、正直にいってこの『Dr.苫米地の脱洗脳禁煙術』は禁煙本として「誰にでも自信をもっておススメできる」という性格のものではありません。
というよりか、禁煙本としては不要な情報が多すぎるし、また普通の人では実践できないような禁煙技術に偏っているという印象を受けます。
だからといって「買うべきじゃない」なんて言いませんが、期待して「これで禁煙してやろう!」と思って買うとガッカリしてしまうかもしれません。
苫米地英人のファンで、「苫米地博士が書いた禁煙本ってどんな感じになるのかな?」という好奇心から読んでみるのだったら別に悪くはないだろうと思います。
以上、この記事がお役に立ったなら幸いです。